「専門性がない。技術がない」と不安になるWebディレクターはどうすべきか

Webディレクター

多くのWebディレクターと交流してきた経験より、多くのWebディレクターが陥りやすい悩みは「自分は専門性がない」という不安です。確かにプログラマーのような技術者でもないですし、マーケターのようにデジタルマーケティングに明るいわけでもありません。そういった専門性のある職種の人たちと日々交流するからこそ、自分の不甲斐なさを嘆いてしまいます。

しかしながら、そこまで不安になる必要はないと考えます。かつては私も不安になったクチですが、浅く広く知識や経験を得ている人材だからこそ活路があると分かりました。原体験を基に将来への不安を感じたWebディレクターがどう乗り切っていくのかについて解説していこうと思います。

Webディレクターとしての立ち位置を測る

不安は能力不足だと感じることがきっかけになりやすいです。それが数値化できているかは関係なく、他者の比較等で自分の能力に対して疑問を持ってしまいます。本当は能力が足りているにも関わらずそう思うこともあります。そういった考えから自分を卑下してしまうのはもったいないことであり、できれば自己肯定感は高く持つ方が良いです。そのため、知ることが大事です。
・他のWebディレクターと比較して自分がどれくらいの立ち位置なのか
・他社で通用するレベルにあるのか
・何が足りていて、何が不足しているのか
などを知ることで、そもそも不安になるべきなのかを知ることができます。まずは現状把握をしていければと思います。

基礎力チェック

Webディレクターは業務範囲が不明瞭であり、会社ごとに異なります。そのため、自分のできることが不足しているのか、足りているのかが分かりづらいです。今回はWebディレクターの数ある業務の中で押さえておきたい基礎力についてお話します。これらの基礎力があれば、自分の能力に対して必要以上に不安になる必要はないと考えます。

●依頼者からの内容を整理して、各担当に伝えるための資料作成ができる
●プログラマー、デザイナー、テスターに要望を伝えることができる
●QCD(品質、コスト、納期)を守ることが出来る

これらが担保されていれば、基礎力としては問題ありません。案件の難易度によって上記を担保できるかは異なりますが、LP制作やDBとの通信が発生するがそこまで複雑ではないページ、簡単な機能修正、デザインが主なページ修正などを指しています。
DB設計の見直し、サーバリプレイスやスペックアップ、1人月を超えるような機能修正や追加案件、APIを軸にしたページ対応などは指していません。

何人月/ヶ月を管理するWebディレクターかで経験量が分かる

Webディレクターの業務には工程管理があるため、各工程のプロの工数を預かります。
各々の会社によって月に使う工数が異なりますが、1人で担当している工数によって経験量を測ることができます。なぜなら、扱う工数が多い分経験する案件も多いからです。経験する案件が多ければ、様々なスキルを獲得する機会があります。

2人月以下  :少ない
2人月〜5人月:普通
5人月以上  :多い

と考えています。これに関しては自分の裁量でどうこうできる話ではないため、受け入れるしかない話ですが自分の業務量に伴う経験量を知るきっかけになればと思います。

どの会社でも使えるWebディレクターのスキルを知る

Webディレクターは会社ごとに求められる業務範囲が異なります。しかしながら、どの会社であっても嬉しがられるスキルがあります。いわゆる、持っといて損がないスキルです。
全員が持っているスキルではないため、これを持っているだけでWebディレクターとしての市場価値は高まりやすく強みになってきます。

●SQL(SELECTによるデータ分析でOK)
●UA(今後はGA4)の知識/使い方(出せるデータと出せないデータを知っているでもOK)
●SEOの基本と押さえるべきポイント
●Google系サービスとの連携
●サーバ、DBに関する基本知識

これらの知識やスキルを持っているのはプラスになりがちです。AC、CVを120%改善したことや何百の案件をリリースしてきたことは確かに良い経験ですが、非常に伝わりづらいです。それよりもその結果に至るに当たって求められるスキルや経験をきちんと身につけておく方をオススメします。

転職しやすい●●型のWebディレクターを知る

Webディレクターにはいくつかのタイプがあります。
・開発まわりの知識のあるWebディレクター
・制作まわりの知識があるWebディレクター
・ネットワークやDBなどインフラの知識がある開発ディレクター
・SEOやコンテンツの知識のあるWebディレクター
といったように、Webディレクター同士には大きな違いもあれば微妙に違ったりと担当範囲が異なります。

この中で転職しやすいWebディレクターとそうでないWebディレクターがあります。厳密に言うと、転職後に活躍しやすいタイプとそうでないタイプがあります。私が思うに転職しやすいWebディレクターは開発まわりが分かるWebディレクターです。

開発まわりが分かるWebディレクターとはプログラマーや開発会社の担当とやり取りする人たちを指しています。色々あるWebディレクターの中でもやり取りが難しい上に深いです。トラブルも起きやすいですし、ミスが起きやすい仕事です。だからこそ価値がでるというものです。制作のWebディレクターやSEO系のWebディレクターなどは難しくないことはないですが、開発を見ているWebディレクターよりは簡易です。また、Webディレクターとしての価値が出づらいです。なぜならWebディレクターを介さなくとも直接のやり取りでも充分なコミュニケーションが取れるためです。

Webディレクターとしての強み領域を作る

Webディレクターは担当業務が広く、やればやるほど薄く広くなっていきます。それが不安を招いてしまうわけですが、そうならないようにするためには強みの領域を作ることです。

これは実際に手を動かすプログラマーやデザイナーの人たちと同等のスキルを持つということです。同じ目線や相手の気持ちが分かるレベルまでスキルを持っておくことです。普段の業務だとなかなかそういった機会がないため、簡単なことではありません。しかしながら、そうでもしていかなと強みを作っていくのは難しいです。

ただ、向き不向きやスキルになりやすいなりにくい領域があります。向いていない且つスキルになりにくい(時間がかかる)ものに手を付けてしまうと大変です。そうならないように、向いているものでスキルになりやすい領域を見つけることが大事です。
【スキルになりにくい(時間がかかる)領域】
・プログラミングスキル
・インフラ系スキル
【スキルになりやすい領域】
・デザインスキル
・コンテンツマーケティングのスキル
だと思っています。私の場合は分析にしました。仕事柄、企画の立案をしたりすることが多いこともあり、いちいち開発側にデータ出しを依頼するのは手間で工数がかかりました。そのため、データベースに関する基本的な理解をした上で出したいデータはそれなりに何でもだせるようにSQLを学びました。

「専門性がない→プログラムを勉強しよう」はミスロード

先程も少し記載しましたが、専門性をつけるためにプログラミングを学ぼうとするのはあまりオススメできません。理由はいくつかあり
・身につけるまでに時間がかかる
・プログラミングスキルを強みにするのは、将来的にプログラマー路線のキャリアに繋がっていく(それなら最初からプログラマーになるべき)
・中途半端に身につけても副業レベルにはならない
といった理由が主になります。

強みを作るというのは、将来的にそっちの路線に進むことに繋がります。プログラマーになりたいのであれば、最初からプログラマーになるべきでありWebディレクターをやっている意味はありません。また、プログラミングスキルがあると副業に繋がりますが、中途半端なレベルであれば実になりづらいです。

プログラマーとして向いていない人がWebディレクターをやっていることが多いため、わざわざ苦手な上で難しいプログラミング領域に手を出す人は少ないと思いますが念の為。

どうなりたいかのざっくりしたイメージを作る

Webディレクターに限る話ではありませんが、何となくでも理想像を描くことは大事です。
その形がない状態でWebディレクターをしていても、無数の案件に忙殺されるだけです。
例えばですが「Webプロデューサー目指しているから、この案件はいい機会かも」といった思考になりづらいです。

どうなりたいかのイメージに正解はありません。しかしながら、事実は知っておいても損はないと思います。
・より上流工程側にいく方が年収は高くなりがち。しかしながら、上流工程側の方がパイが少ないため誰しもがなれるわけではない
・プログラマーなどの技術に寄せていけば、食いっぱぐれない確率が高い。しかしながら、技術には上が上がいることを思い知る
こういったその道の未来を認識しておく方があとになってから後悔しません。

私が知っているWebディレクター何名かを例にあげると
・とにかく技術に強かったWebディレクター➜大手企業に転職してAIエンジニア(年収900万円)
・要領がよく、話をまとめる力が高かったWebディレクター➜大手企業に転職してPdM(年収750万円)
・覚えの良さがとにかく良く、何でも知ってるWebディレクター➜ベンチャー企業に転職してPdM(年収650万円)
・技術に明るめでそれなりに何でも薄く広くできるWebディレクター➜大手企業に転職してWebディレクター(年収550万円)
・デザイン方面に知見のあるWebディレクター➜大手企業に転職して制作系のWebディレクター(年収450万円)
・SEOに知見のあるWebディレクター➜ベンチャー企業に転職してSEOのディレクター(年収600万円)
といった感じの元同僚達がいます。やりたいことを明確にしていたり、需要のあることに強みがある方々は良い転職をしている様子でした。とは言ってもなかなか難しい話でもあります。そんな方はWebディレクターを極めながらその上位種を目指していくのが無難と言えます。

Webプロデューサーを目指していくなら…

WebディレクターからWebプロデューサーになっていくのは自然なルートの1つです。
しかしながら、誰しもがWebプロデューサーになれるけではありません。なぜなら、Webプロデューサーは求められる役割が異なり、必要なスキルセットも異なります。

WebディレクターからWebプロデューサーを目指していくのであれば
・ユーザー向けの案件を行う際にAC、CVをより高めるにはどうすればいいのか
・Webディレクターをしながら企画立案業務にも携わっていく
・デジタルマーケティング等のWebに関わる別の職種の知見も高めていく
といった働きがけが現実的です。Webプロデューサーに求められることは扱うサイトのさらなる成長です。基本的にはACやCVがKPIになりやすいため、そこに寄与するような働きをしていくことです。Webディレクターをしているため、扱うサイトのことはよくわかっていると思いますし、業界知識もそれなりにあるはずです。そのため、企画立案も比較的しやすい環境にあると言えます。

PdMを目指していくなら…

WebディレクターのキャリアにPdMもあります。最近流行りの職種であり、需要の高まりがあります。こちらもWebディレクターとは求められることが全く別です。スキルセットも異なります。

WebディレクターからPdMを目指していくのであれば、
・お金につながるような機能を考えてみる
・営業サイドの働き方や勘所をつかむようなコミュニケーション機会を作っていく
・業界知識や経営戦略など、高い視座での考えや知識を身につけていく
・世の中にある様々なビジネスモデルを学ぶ
・サイトのACやCVとは別に顧客体験やDX化を意識する
といったことが現実的です。事業会社のWebディレクターを例にすれば、ユーザーを集めることや動かすことだけではなく、クライアント側の気持ちや動きにも注目することです。クライアントの強みを活かしながら、それをユーザーに体験させるにはどうすれば良いのかを思考していくことです。

PMを目指していくなら…

WebディレクターからPMは他の職種に移るよりも容易です。なぜなら求められる役割とスキルセットが被っているためです。Webディレクターとして無数の案件をこなしていると思いますが、PMは数ヶ月、数年単位で1つのプロジェクトをリリースさせていくことが必要です。

WebディレクターからPMとして職種を移していくためには
・営業サイドや経営陣などプログラマー等とは異なる考えを持つ人達もコントロールできるような伝える力や聞く力を養っていく
・同じような案件だけではなく、様々な案件を体験する
・QCD(品質、コスト、納期)を最大化する
・依頼者に対して代案(こうやったほうが良い)を出せるような経験をしていく
・プログラマーやデザイナーなどに対して気持ちよく働いてもらうコミュニケーション術を学ぶ
といったことをしていくといいです。普段の業務から学べることが多いため、PMへのキャリアも夢物語ではありません。

PdMにも言えることですが、PMに任命される人は信頼のある人です。信頼は日々積み重ねていくものであるため、転職してPMを目指すよりも現職でPMになる方が早いかもしれません。

まとめ

不安に感じているだけ、何も感じない人よりも成長意欲や危機管理が優れた方です。
どうしようもない不安にかられて手に付かない時期もあるかもしれませんが、未来と周りを正しく捉えることで、次のステップが見えてきます。

 

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