事業会社のWebディレクターと制作会社のWebディレクターの違いとは

Webディレクター

Webディレクターは事業会社と制作会社で分けられます。MECEになっており、Webディレクターは必ずいずれかに当たります。そして約8割は制作会社のWebディレクターであり、残り2割が事業会社のWebディレクターです。「事業会社の方が割合が低い分、難易度が高いのか?」という疑問に対する答えはYESです。事業会社と制作会社のWebディレクターは目的や目標に伴う役割が全く異なるため、求められる難易度が異なります。だからといって、「事業会社のWebディレクターが偉い」というわけではありません。単に難易度が異なるだけという話です。年収や会社の雰囲気等も全く異なりますが、本日はその話は置いておいて、役割に絞った話をしていきたいと思います。Webディレクターに興味のある方はどちらに進みたいのかを参考にしてみてください。

制作会社のWebディレクター編

制作会社のWebディレクターとは、発注者が外部でありそのクライアントとWebサイトの構築を目指すポジションです。外部のクライアントと開発チームの間に立ちながら、クライアントと握ったスケジュール通りにWebサイトの構築を目指していきます。クライアントは多岐に渡り、Webサイトを持つ必要がある企業の全てが対象です。そのため、幅広い案件に携われる楽しみがあります。

制作会社は上場しているような大規模組織もあれば、少人数で運営している中小企業まで様々です。また、フリーランスのように個人でやられている方もいらっしゃり
【大規模な制作会社】
多くの人を有するような大規模案件を受けるのに強いため、知名度のある案件にジョインできる
【中小の制作会社】
働き方が自由であることが多く、裁量も大きいです。案件であればバンバン受けていくスタイルがあるため、とにかく忙しい
といった特徴があります。転職サイトの写真付きで見るようなキラキラしたWeb会社は中小の制作会社であることが多く、月収の高さや自由さを売りにしていることが多いです。大規模な制作会社は普通だと入れないような会社等にも常駐することがあるため、知らない世界を知ることができたりもします。

目的・目標

制作会社のWebディレクターには明確な目的と目標があります。

【目的】
クライアントのビジネスをWebとかけ合わせて成功させる
【目標】
定めた納期までにWebサイト・アプリを構築する

というものです。Webサイトやアプリを構築する理由はビジネスのスケールアウトを狙っています。そのため、Web領域への進出をするわけですがクライアントはIT領域にあまり詳しくないことが多いです。そういったクライアントに対して、コンサルティングをしながら何をすべきか整理しながら理想のプロダクトを作っていく必要があります。その形の認識が取れたら、要件を整理して制作・開発チームと連携してスケジュール通りにリリース出来るように進めていきます。

目的と目標が上手くリンクしていないところに難しさがあり、目的はクライアントに対して目が向いており、目標は主に制作・開発チームに対して目が向いています。そのため、バランス感覚が非常に重要であり、クライアントファーストでいきすぎると、目標が未達成になることも多々あり、目標ファーストでいいきすぎると、価値のないWebサイトが出来上がりクライアントが満足しないことが多いです。Webディレクターはこの両立が難しい目的と目標を上手く達成していく必要があります。

求められる役割

制作会社のWebディレクターに求める力は
・スケジュール管理能力
が絶対です。未経験でもなれるのは細かいことは気にせず、とにかくスケジュールを守るために奮闘すれば良いという認識がありがちなためです。未経験のWebディレクターはほぼ何も分かっていないので、まずはクライアントの要望を全て受け取り、それを全て実現するために制作・開発チームを進行管理していくような仕事をしがちです。これが良いかは別にして、これで納品物がきちんとリリースされればビジネスモデルが回るため、スケジュールを守る力があればOKという風潮もあります。

しかし、そんなWebディレクターはただの伝書鳩であり、制作・開発チームからしたらいい迷惑です。「無能なWebディレクター」と言われるのはこのタイプであり、スケジュール管理能力だけあっても、Webディレクターとしては名乗れはできても、三流以下と言わざる終えません。

一流の制作Webディレクターと言われるようになるには
・クライアントの課題を言語化する能力
・顕在化した課題を解決するための引き出し力
・クライアントにも要望をのんでもらう関係性の構築能力
・開発チームが気持ちよく働けるような、要件整理、スケジュール管理能力
・開発チームからの要望を上手く咀嚼してクライアント双方と折り合いをつける能力
といったことが求められます。クライアントが持つビジネスをスケールアウトさせることにも成功させることができ、開発チームも気持ちよく働くことが出来るような調整能力がある制作Webディレクターが一流と言えます。しかし、こういったことまで出来るWebディレクターはそう多くはなく、多くの経験を積むことが絶対条件であり、数々の失敗をする中でデキることデキないことのラインを知っていく必要があります。また、ビジネスに対しても一定の知識が必要であり、クライアントの業界知識やビジネスモデルまで理解しておくことが重要です。

向いている人

制作会社のWebディレクターに向いている人は粘り強さ成長意欲だと言えます。最初から一流のWebディレクターになることは不可能であり、多くの失敗をしていく必要があります。また、クライアントから無理な要望を言われたり、開発陣に上手く伝えられず苦労したり、文句を言われたりと板挟みの連続です。そのため、新米Webディレクターは各方面からのサンドバック状態です。そういった経験を経ていくことがほぼ分かりきっている中で粘り強く向き合えるかが重要です。

また、ITの仕事全般に言えることですがトレンドの移り変わりが激しく、技術の進歩も激しいです。古い知識を使い倒すことはできず、常に新しい情報を入れていく必要があります。そのため、勉強嫌いだったり安定志向の人には向いていないと言えます。

1つ言い忘れたこととして、自走力も重要です。先輩社員がついて色々教えてくれることはほぼなく、結構ほったらかしになることが多いです。常駐等になれば会社との関係性を感じなくなります。そんな状態でも走りきれる力が大事になってきます。誰かに世話を見てもらいたかったり、一緒に成長したいという気持ちがある方には向いていないかもしれません。

しかし、未経験でもWebディレクターになれるほど、参入障壁が高いわけではありません。そのため、向いている可能性があれば挑戦可能である仕事とも言えます。

キャリアプラン

制作会社のWebディレクターのキャルアプランは
・制作会社の管理職になる
・事業会社のWebディレクターになる
・フリーランスになる
のいずれかであると言えます。管理職になるのは制作会社のWebディレクターに限る話ではないので、事業会社のWebディレクターに進む道とフリーランスに進む道についてお話したいと思います。

まず、事業会社のWebディレクターですが、制作会社出身のWebディレクターが多くいらっしゃいます。どの方に聞いても「事業を作る側に回りたい」といった気持ちで進まれる方が多く、受けから攻めへの意識により進まれる方が多いです。事業会社そのものが大企業であることが多いので、将来的な年収の高さや雇用の安定度、知名度等満足する条件であることも多いので、魅力的なキャルアプランと言えます。

もう1つのフリーランスですが、より成り上がっていく気持ちの強い方が進む道です。友達にも1人いますが、東京の荒波に真正面から向かっていく強い気持ちのある人物です。このキャリアは収入の高さが魅力であり、制作会社にいるときは会社にマージンを取られていましたが、それが丸々はいってくるため高収入も狙えます。しかし、雇用の安定度はほぼ0であるため、営業力も必須になってきます。制作会社時代から関係性を作ったり、長く付き合ってもらえるような関係性を作っていく必要もあります。

個人的な見解

制作会社のWebディレクターについて色々と書かせてもらいましたが、個人的な見解も述べさせていただきます。私が制作会社のWebディレクターに対して思うことは
・優秀なWebディレクターはごくわずか
・未経験から挑戦できることは魅力だが、ずっとやる仕事ではない
・もし挑戦するなら会社選びを間違えないように
ということでしょうか。制作会社のWebディレクターと大勢会ってきましたが、プログラマー上がりのWebディレクターは比較的優秀ですが、そうでない場合はあまり魅力的な方がいない印象でした。少しキツいことを言えば、「その知識でITの仕事しているの?」と思う方は多かったです。だから何という話ですが、「Webディレクター 無能」という言葉が流行った原因だと思っています。

また、ビジネスモデルの都合上ですが辛い場面も多い仕事です。下手な人がやるとデスマーチを作りがちであり、上手い人であってもクライアント次第ではデスマーチになります。その上、年収が上がり続ける仕事でもないため、ずっとやる仕事ではない印象です。

未経験からIT系の仕事ができるため、キャリアチェンジの1つとして考えるのはアリだと思います。その後、転職することを前提としていたとしても、制作会社のWebディレクターを最初にするキッカケとしてもアリだと思います。しかし、最初の会社選びを間違えないようにして欲しいです。制作会社は何かの理念があることはほぼなく、金儲けファーストの社長であることが多いため、社員に対しては単価で見ていることが多いです。そのため、スキルや経験を積むために頑張ろうとする気持ちやあなたの夢よりも、「クライアントの言うことを聞いて上手くやれ」という思考が強めです。そういった金儲けファーストが強すぎる会社で働くと、心が疲弊します。ただ、どの会社もそんなことはないと思っています。制作会社は数多く存在しますので、比較検討が可能です。何となくの雰囲気や年収だけに釣られずに中身までしっかり見る癖をつけた方がいいです。

事業会社のWebディレクター編

事業会社のWebディレクターとは自社で事業を展開する企業でWebディレクターをされている方です。自社の営業と開発陣の間に立ちながら、定めたスケジュールにコミットしながら案件をリリースしていきます。制作会社とは異なりクライアントは存在せず、自社の営業部長や企画営業から要求事項を吸い上げて案件化し、開発陣に要件を伝えてリリースしていきます。

事業会社のWebディレクターは大企業であることが多く、世の中的に知られているサービスを運営することが多いです。有名どころだとリクルートが展開するSUUMOやカカクコムが展開する価格.comなどといったサービスは事業会社のWebディレクターにあたります。

1番の面白みは世の中への影響力とその反響を知ることであり、自身が手掛けた案件を利用したユーザーがいい反応をしてくれたりすると、素直に嬉しいものです。また、自社のビジネスを育てることができるため、やりがいも大きい仕事と言えます。

目的・目標

事業会社のWebディレクターは目的と目標が企業によって異なります。それは、求める範囲の違いであり、Webディレクターに対してPdMやWebプロデューサーのような範囲まで求める会社もあれば、シンプルに進行管理を求める企業まで様々だからです。

事業会社のWebディレクターを4年以上、Webプロデューサーを2年以上、PdMを2年以上務めてきた身としては、明確な目的と目標があります。

【目的】
自社のサービスを成長させ、さらなる事業展開を実現していく
【目標】
案件やプロジェクトを規定の日に必ずリリースする

というものです。事業会社のWebディレクターをしている以上、自社のサービス成長とビジネス展開を目的におくことが重要であり、そうでなければWebディレクターからWebプロデューサー、PdMになっていくことはほぼ不可能です。しかし、Webディレクターである以上、案件を決めた日に必ずリリースすることが最重要課題です。自社の営業メンバーはその日から営業をかけていくスケジュールを作っていたり、プロモーション戦略も立てています。そのため、目的に対して目標が離れているように見えますが、Webディレクターがその日に必ずリリースすることが間接的に自社のサービス発展に寄与しています。

Webプロデューサーであれば、サービスの成長等を考え、PdMであれば顧客満足度とサービス成長を両立したビジネス展開のできるプロダクトを創出することが目標になってきますが、Webディレクターであればまずは規定の日に必ずリリースすることが目標と言えます。

求められる役割

そんな事業会社のWebディレクターに求めることは、決めた日に必ずリリースする調整能力です。それだけ聞くとシンプルですが、絡み合う要素が多く
・要件を整理する能力
・立場が上になりがちな営業に対して、言うことは言う能力
・全体の不和を生まないように関係性を作る能力
・開発陣に対して無理なく甘えないスケジュールを引く能力
・自社サービスの仕組みを理解しきる能力
等々が必要です。極端な話をすれば、何も知らない新卒社員がWebディレクターをしていたとすれば、営業の言うことを100%聞いてそれをそのまま開発陣に伝えることになります。そうなれば、無理な要件を無理なスケジュールで対応する羽目になります。また、自社のサイトの仕様を把握していないため、開発陣に要件を伝えることもままなりません。これでは、へんてこな機能やサービスがいつまで経ってもリリースされない事態になります。

そのため、事業会社のWebディレクターは誰よりもサイトに詳しく、取りまとめが丁寧かつ適切であり、営業を始めとした関係者に信頼されている必要があります。
「何かあれば◯◯に聞けば良い」「とりあえず、◯◯は呼ぶ」こんなことを言われるWebディレクターは優秀です。周りからの信頼が厚いため、スケジュールの調整も容易であり周りも納得感をもっています。

向いている人

事業会社のWebディレクターに向いている人は要領の良さ、開発に強い、自社サービスが好きな人、ビジネスが好きな人です。どの事業会社も、、、というわけではありませんが、とにかく案件数が多い上に覚えることがかなりあります。特に新米Webディレクター時代は自社のサイトについて知らないことばかりなので、毎日新しいことが入ってきます。そして並行して案件も進んでいます。そんな中で鈍臭いといつまで経っても仕事が務まりません。

また、事業会社で上に行く人は総じて開発のことをよく分かっています。サーバの構成、DBのテーブル構成と各カラムの意味、各ページがどのテーブルと連携していてどんな処理が走っているのか、バッチの数と種類とそれぞれの意味などサイトの裏側から理解しています。そういった知識があるからこそ、各案件を行う際のリスクや考慮するポイントなどが即座に浮かんできます。

後者2つに関しては、結構大事です。Webディレクターに限った話ではありませんが、扱うサービスに対して愛がある人とそうでない人では向き合い方が全然違います。Webディレクターはマクロに物事を捉えながらもミクロにまでこだわる仕事です。これをしっかりできる人はやらされタイプにはできません。感情的に「このサービスを成長させたい」と思える人でないと、魂が細部に宿るような仕事にはなりません。また、Webディレクターは将来的にビジネスを作ったり、推進する立場になっていきます。そのため、そういったポジションが明るいと思える人でないと、Webディレクター止まりになってしまうため、向いているとは言えないかもしれません。

キャリアプラン

事業会社のWebディレクターは
・Webプロデューサー、PdMになる
・IT戦略側に移っていく
だと言えます。最も分かりやすいのは自社のWebプロデューサー、PdMになっていくことであり、よりサービスの成長やビジネスの成功にコミットする側に移っていくことです。社内のこともよく分かっており、サイトのこともよく分かっているので、経験を活かしやすい仕事です。しかし、全ての事業会社に対して言えるわけではありませんが、事業会社のWebディレクターは安く扱われがちです。多くの事業会社は営業優先であり、年収に不満を持つ方が多いです。そのため、「ここでWebプロデューサーになっても、未来ないなぁ」と感じて、転職する人は少なくありません。

転職する際は気をつけてください。転職先でいきなり前職と同じポジションで入れることは多くありません。言ってしまえば、1から下積みしていくことになるため、
・比較的実力主義で、力があれば早い段階で登用してもらえる企業
・WebプロデューサーやPdMが良い年収である企業
であることが条件です。同じように、大した年収ではない企業やいつまで経っても上がれない企業は避けたほうが無難です。

もしくは、IT戦略側に振っていくことです。Webディレクターは開発陣よりは開発のことに詳しくはなく、プログラムが書けない人のほうが多いです。なので、そういった専門側に寄っていくよりは、より上流の戦略側に身を置いてくことです。ITのこともよく分かっており、事業会社で得たビジネスを考える力や交渉能力を活かす先はIT戦略です。WebディレクターからいきなりIT戦略に移るのはそう簡単ではないので、Webプロデューサーになってからでも良いですし、転職で思い切った挑戦をするのも手です。しかしながら、IT戦略という言葉はシンプルですが求められることは高いです。そう簡単な道ではないということだけお伝えしておきます。

個人的な見解

事業会社のWebディレクターを経験した身から、個人的な見解を述べさせていただくと
・若くして責任感とやりがいのある良い仕事だが、給与レンジに課題がある
・良くも悪くも広く浅い部分があるため、エッジを立てていく必要がある
・組織に問題のある企業が多い
ということです。1つ1つ説明をさせていただきます。
まず責任感×やりがいによる良い仕事であるが、年収が低い点についてですが、これは認識しておく必要があります。事業会社の多くは営業から成り上がった会社であるため、営業よりも年収が低くなりがちです。また、IT部門が軽視されている傾向があるため、責任感の重さや仕事の質に対して給与が見合っていないことが多いです。そのため、事業会社のWebディレクターを検討されている方は、年収情報を調べておくことをオススメします。個人的には営業から成り上がった事業会社よりもテック系の事業会社をオススメします。

2点目ですが、Webディレクターは専門性に欠ける部分があります。そのため、Webディレクターとして極めていってもどん詰まりするかもしれません。そのため、何かしらのエッジを立てていく必要があります。Webディレクターをしていると色々な仕事に携わることができるため、その中で自分の得意な領域を見つけていくと良いです。事業会社のWebディレクターをしている同僚は数しれずでしたが、SEOに進む人もいればUI/UXに進む人、戦略に進む人など道はいくらでも広がっています。

3点目ですが、こちらは全ての企業に言えることではありません。ただ、傾向として組織に問題を抱えていることが多いです。それは、ITのリーダーや取り仕切るポジションに営業で成果を上げた人や謎の人が抜擢されることが多いためです。やはり、ITでキャリアを作ってきた人にとっては明るい話ではなく、話が噛み合わなかったり、納得感のない方向に進むことが多いです。そのジレンマに対して、ある程度受け入れていく必要があります。

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