「オウンドメディア立ち上げたいし、伸ばして」とWebプロデューサーが言われたらどうするべきか

Webプロデューサー

オウンドメディアとは企業が保有するメディアです。例えば、WordPressで運営しているこのブログは個人が運営していますが、仮に企業が運営している場合はオウンドメディアと言われます。

最近はこの言葉が流行っており、どの企業もオウンドメディア!オウンドメディア!といった感じで自社メディアを持つ流れがあります。しかしながら、この流れはどうなのでしょうか。
・本当にオウンドメディアを立ち上げるべきなのか
・闇雲に立ち上げていないか
・立ち上げたけど、全然伸びない状況が続いていないか
・オウンドメディアにあれもこれも求めすぎていないか
など、オウンドメディアに対しての立ち回りに困っているWebプロデューサーがいるのではないでしょうか。本日は、オウンドメディアに関するアレコレについて解説していきます。

オウンドメディアの現状

まずはオウンドメディア自体どうなのという話です。

参照:広報会議

これは2020年のデータですが、7割以上の企業がオウンドメディア注力していると分かります。そのため、巷で聞こえるオウンドメディアブームはそれなりに確かな声と言えます。
しかしながら、注力するという声がありつつも現実は異なります。

参照:MarkeZine

NOWで運営している企業は4割程度であり、実に4割弱はオウンドメディアの運営に失敗しています。先程のデータとは集計先が異なるため、若干データの整合性が取れないところもありますが、
・はじめはやる気満々で立ち上げて運営開始
・しばらくしたら、運営を停止してしまう
といった流れがあると分かります。Youtubeチャンネルを立ち上げて最初は意気揚々と運営しつつも、伸びないことに嫌気がさしてしまうYoutuberの流れと似ています。

また、運営を停止してしまうオウンドメディアとそうでないメディアのデータとして以下のようなものがあります。

参照:MarkeZine

8割以上の企業が2年以内に撤退しており、続けている企業の内2年を超える企業は5割以上です。このことからも、ダメダメですぐに止めてしまう企業と根気強く続ける企業に分かれていると分かります。

続けるか否かの判断は責任者等の上層部が行いますが、その判断をするための材料や事前ネゴはWebプロデューサーの責任範囲です。オウンドメディアを存続させることだけが正解だとは思いませんが、上層部が正しい判断をするためにも、Webプロデューサーが明確な戦略と戦術、正確なデータ、ストーリーを提示していく必要があります。

目的を定める

まずはなぜオウンドメディアを運営するかを定められていますでしょうか。
何となく上司が「オウンドメディアってアリなんでしょ」みたいな感じでぬるっと立ち上げていませんでしょうか。そういった流れで立ち上げても絶対にうまくいきません。初期の費用対効果の悪さに耐えられずに2年以内に閉じることが目に見えています。

そのため、オウンドメディアを運営する目的を整理する必要があります。各企業で運営するオウンドメディアに期待する目的は以下のとおりです。

参照:PR TIMES

多くの企業は「私達の企業っていいところなのよ!」「だからうちの商品も良いものなのよ!」といった企業の認知を期待したり、そこから展開する商品への購買促進を期待しているようです。

このことからも企業があまり考えずにオウンドメディアを展開していることが分かります。プロダクトアウトな思考が満載であり、マーケットインで展開されていません。メディアを運営したことのない企業が陥りやすい思考と言えます。企業からすれば、「うちっていいとこなのよ〜」と伝えたいのかもしれませんが、一般人からみて「○○会社っていいよね」みたいな印象というのはオウンドメディアからではほぼ成り立ちません。
・✕✕という商品は〜なんです
・□□という商品は〜なんです
みたいな記事がいくら書かれたところで、「○○会社って素晴らしい企業だね」なんてことはなりません。

本来は数々の良い体験をユーザーに与え続けることで「○○って美味しいね」「✕✕って美味しいね」「○○と✕✕って□□会社の商品だったの!あの会社すごいね」という流れで企業イメージが向上するものです。そのため、オウンドメディアで企業ブランディングを狙うのはミスリードだと思っています。

多くのオウンドメディアが失敗していることからも、こういった企業を軸にした目的からなる立ち上げは危険です。オウンドメディアは目的が全てです。目的がメンバー全員に納得しているものであれば、赤を流していてもブレずに進められます。しかしながら目的が不明瞭だったり、納得感がない、現実的ではないものだと「やっぱり止めた」という展開になってしまいます。

目標を定める

現状は、企業のイメージアップを狙ったりそこから商品展開を目的とするオウンドメディアが多い状態ですが、それに伴う目標が必要です。目標は日々追う数字であるため、数字に直せるものである必要があり、且つ現実的でPDCAが回せるものである必要があります。

ここでも各企業がKPIとしている指標が開示されているため、御覧ください。

参照:PR TIMES

PV数が抜けています。とある事業会社でサイト運営をしている私からしてもPV数やCV数をKPIとして置くのは一般的であるため、あまりズレているとは思いませんでした。
※他にある企業認知度の向上や企業ブランドの価値向上は目標としてズレていますけどね…

しかしながら、一応サイト運営としてはプロである私から付け足すとすれば、
・全体PV数の目標とオーガニック流入の2つを目標に置く
といったところでしょうか。企業がオウンドメディアを始めるのは有名Youtuberの友達がYoutubeを始めるのに似ており、コラボを繰り返したり、手助けでブーストをもらっているような状態です。しかし最後はその人の自力が全てです。オウンドメディアも同様であり、お金の力でシェアさせたり、高い記事を書いたとしても、麻薬みたいなものです。それは本質的な力ではありません。最後はその企業がお金をかけずとも流入を狙えるオーガニック流入が重要です。お金をかけて初期ブーストができたことで「いいじゃん」ではなく、サイトとしての自力がどうなっているのかを正しく測るためにもSEO流入の具合はしっかりと見るべきです。

また、先程の表に色々なKPIが書かれていますが、
ユニークユーザー数(UU):良いと思う
滞在時間:流入元によって振れ幅が大きいため、参考にしづらい
掲載した記事本数:記事を上げることが目標になると質悪記事が量産されるため良くない
SEOランキング:外部要因が大きいため良くない
SNSのいいね数:お金で解決できてしまうためよくない。また企業がSNSをやるのは上手く行かないことが99%なので、良くない
といったところでしょうか。CV数をKPIに置いているケースもありますが、いけるならアリだと思います。しかしながら、オウンドメディアからCVを目標に置くと辛いことになります。4,5年経ったオウンドメディアであれば良いと思いますが、1,2年のオウンドメディアがCVを目標に置くと0が続くと思われます。

戦略と戦術は問題ないか

どんな事業を扱うにしても戦略と戦術が必要です。我々の知っている大企業というのは、ブレない戦略と質の高い戦術を繰り返してきたことで成り立ってきています。そのため、オウンドメディアを成長させるためにもその戦略と戦術が必要です。そして、多くの企業はこれをやりません。戦略を考えずに方向の違う戦術をいくつも展開してしまいます。そのため、一貫性がなくなり狙いたい効果がなかなか実になりません。

では、オウンドメディアにおける戦略と戦術ですが、どう定めるのが正確でしょうか。
それは事業課題を明確化することから始まります。
【紹介からの問い合わせはあるが、HPからの問い合わせが少ない】
という事業課題があるとすれば、「紹介してもらえるほどの商品力はある」と分かります。そのため、プロダクト自体は問題ないと予測できます。ただ、認知力が足りていないためプロダクトが多くの目に触れることがありません。であれば、プロダクトを多くの目に触れさせるために、
・プロダクトをどんな人に使ってもらいたいか(どういったワードで検索されるか)
という流れになってきます。戦略の大方針は「狙いたいユーザーが検索するワードでSEO1位を取ろう」などになってきて、それに伴う戦術として「まずはオウンドメディアを立ち上げる」「分析するためのUAやGA4の整備」「現在1位の記事に勝つための技術的な施策」「まずはロングテールで外堀を埋めていく」などの戦術が作られてきます。

【もっと契約を増やしたい】
という課題があったとします。「そのためにオウンドメディアを立ち上げて問い合わせを増やそう」なんて思考になる企業が多いと思います。しかし、事業課題自体は正しいと思いますが、それに伴う戦略は正しいでしょうか。契約が少ないことに対しての深堀りをしていくと
・問い合わせは一定数あるが、契約まで結びつかない
・契約まで結びつかないのは営業の仕方に問題がありそう
なんて展開になってきたら、オウンドメディアで問い合わせを増やす前に問い合わせを確実に契約に結びつかせるまでのクロージングに課題があります。そのため、オウンドメディアを立ち上げるのは課題に対する解決にはなりません。

私が思うにオウンドメディアによる問い合わせを増やす戦略を立てがちな企業が多いと思いますが、それにたいしてなぜなぜをしていくと
・そもそも商品力がない
・営業側のフォローに問題がある
など別の課題が本質的なものだったりすることが多いです。また、良い戦略が整ったとしても、実行する戦術部隊に問題があることも多いです。何となく片手間で運用していたり、そもそも知見等がなく進みが悪いなどです。
・ブレない上に将来性のある戦略になっているか
・戦略を立てた上で本当にオウンドメディアという結論になるのかの再考
・戦術を実行する下地は整っているか
これらを整備した上で進める必要があります。

オウンドメディアを運営するにあたって知っておくこと

この記事を御覧頂いた方は少なからずオウンドメディアを進める方向になっているのではないかと思います。それに伴い
・どうすれば伸びるのか
・知っておくべき現状はなにか
など、即効性のある知識を求めていると思っています。オウンドメディアにもそういった決まった知識があります。それについても共有していければと思います。

SEO的に有利な立場にある

医療系などのブログは病院系が上位にくるようになっており、誤情報が身の危険になるジャンルは個人ブログでは狙うべきポイントではありません。また、気づいている方もいますが、政府系のHPなど権威性の強い場合も上位表示されるようになっています。何が言いたいかと言いますと、企業のHPは個人のブログよりもSEO的に有利な立場になりやすいです。そのため、個人ブログが半年から1年かけてSEOの力をつけていくのに対して、企業のオウンドメディアは上位表示が狙いやすい立場にあります。

何も考えずに立ち上げてもSEOの効果はありませんので、企業HPからの被リンクやサブドメインにしたり、SEOの基本対策はしなければなりませんが、どこからも被リンクが受けられずにドメインパワー0から始まる個人ブログよりもはるかに有利にあります。

記事のクオリティと数を保つ

オウンドメディアというよりブログを伸ばす基本ですが、記事のクオリティと数を保つ必要があります。質の悪い記事を量産しても効果はありませんし、質の高い記事を数本上げても効果はありません。質の高い記事を一定の周期で上げ続ける必要があります。

外部委託すべきか

個人ブログであれば、外部委託などはなく自分で記事を作りづつけることが基本ですが、企業がオウンドメディアをするなら別です。外部委託という選択肢がでてきます。しかしながら、外部委託はアリでしょうか。こちらは各企業に調査をとった結果です。

参照:PR TIMES

約半数の企業が外部委託をしていません。逆を言えば半数は外部委託していくことになりますが…
これらの数値を裏を読めば
・オウンドメディアの動かし方がわからず、外部委託で記事を作成してもらっている
・記事の質を担保するために外部委託をしている
・ライタースキルのある人がいないため外部委託をしている
といったところでしょうか。外部委託をする理由としては正当ですが、個人的にはそんな理由であっても外部委託するべきではありません。
・ランニングコストがばかにならない
・オウンドメディアブームに乗っかったコンサルもどきや質悪ライターが多くなっている
・同じくブームに乗っかってライター費やコンサル費が高くなっている
・外部委託をして恩恵を受けるのはライター(被リンクをゲットできる)
・そもそも外部委託するくらいならオウンドメディアをやらないほうが良い
・外部委託をし続けるとオウンドメディアの一貫性が作れない
等の理由から外部委託するべきではないと考えます。言葉は悪いですが、所詮記事を書く程度です。個人からでも始められる事業の1つであり、難易度で言えば低いです。質はいずれ追いついてくることを考えれば「コスト面」「スピード面」「一貫性のある記事」「スキル・知見の定着」を考えても内製化にして低リスクで進めるべき分野だと考えます。

当たり障りのない記事、アピール記事はウケない

個人ブログやYoutubeの運営を自分でしたことがある方なら肌感のある話だと思いますが、箸にも棒にもかからない記事や自分を見せたがるコンテンツはウケません。他がやっている二番煎じや企業アピール、プロダクトアピールを露骨にしたところで何の効果も上げません。

企業の体質や担当する人の力量にもよるところがありますが、すぐにプロダクトアウトな思考になりがちです。「我々はこれを売りたいから、これをよく見せる記事を書く」「こういう世界観を作りたいから、世界観を見せる記事を作る」などやりたいことをやっていても一向に伸びません。大事なことは求められることを書くことです。

企業だからできる記事を作成する

オウンドメディアと言いつつも、やっていることは記事コンテンツみたいなものです。そこから自社のサービスに問い合わせがあるかないかの違いであり、大した違いはありません。そうなると、何となく記事を投下していても個人ブログには負けます。なぜなら個人ブログでわかっている人は伸ばすコツを知っていますし、企業内であーだこーだ議論している内にどんどん記事を投下してきます。

そんな状況下であるため、企業だからこそできる記事を作る必要があります。
・自社が集めたデータを基にした定量分析記事
・そこの業界で働く人だからこそ知りうる記事
・プロダクトに関する詳細な記事
など、外の人間では書けないような記事や会社だからこそできるアンケート結果をもとにした内容などです。

PdMから見てオウンドメディアはアリかナシか

私がオウンドメディアの立ち上げを決められる立場であれば、立ち上げません。
なぜなら、
・オウンドメディアは成功しないと思っている
・企業がオウンドメディアを立ち上げるよりも成功率の高い方法を知っているから
です。オウンドメディアというのはDXやSDGsと同じくらい乗せられている言葉です。それにより一部の企業(オウンドメディアだとライターをまとめているような企業やメディアコンサル系)が儲けるだけでオウンドメディアを運営する側が儲けるケースが著しく少ないです。そもそも、このブログ以外にも3つのメディアを運営している身からすれば、こういったメディア運営がいかに難しいかをわかっています。

また、企業がオウンドメディアを立ち上げて企業ブランドの認知を取るという目的を持つのであれば、それ以上に良い安価で効率的な方法を知っています。ここでは言えませんし、聞かれても答えませんが、メディアの伸ばし方やSEOの知識、ブランディングの仕方などの仕事でキャリアを作ってきた人間からすればもっと良い方法があります。

そういった理由から私ならオウンドメディアを運営する判断はしません。

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